カフェスタイルの待合空間

病院やクリニックの待合空間は、椅子の向きなどに差はあれど、参考写真のようにテーブル類もなく、椅子が並んでいる画一的なつくりが多いかと思います。

それには理由があります。

● 限られた空間内で、多くの患者様が待てるように、なるべく詰めてレイアウトする。

● 受付から患者様の容態や忘れ物がケアできるように、テーブル等の視認性を妨げるものを設けない。

● テーブルなどを設けた場合、常に清潔に保つために天板の掃除などで手間がかかる。

といった理由が考えられます。

当事務所では、この目的がクリアできるのであれば、または診療科によっては当てはまらないものもあるかと思いますので、他と差別化するために、画一的なつくりから脱却した待合空間の提案も行っております

例えば『カフェスタイル』の待合空間です。

予約診療が一般化してきた昨今、昔ほど長い時間、待合にて待つことは少なくなったかもしれませんが、”時短” が主流となりつつある現代においては、時間を有効に利用することが様々な用途の施設に求められているのではないでしょうか。

好きなドリンクをすすりつつ、本を読んだり、スマホを見たり、と診察を待っているという感覚ではなく、カフェや喫茶店で過ごしているような待合空間もあり得ると考えています。

これから新規開業するクリニックにおいて集患を考えた場合、従来のスタイルの待合空間と『カフェスタイル』の待合空間では、年齢層にもよりますが、後者の『カフェスタイル』の方が好まれるケースもあるのではないでしょうか。

もちろん全てのクリニックに導入すべきものとは考えていません。

新規開院するエリアが、都心部の場合、比較的新しく形成された街の場合、女性の多い診療科の場合など、条件が当てはまるときには、検討してみてもよいのではないかと考えています。

実際のところ若年層の患者様は、雑誌やスマホを見て時間をつぶす方も多いと思われます。

この場合、参考事例のようにテーブルを設け、セルフサービスのコーヒー、お茶、ミネラルウォーターなどを飲みながら過ごしていただくことも提案の一つと考えております。

重要なことは、全てこのテーブルスタイルにするのではなく、従来のオープンな椅子のエリアも残しておくことです

オープンな席での常連さん同士のコミュニケーションも大切にしていきたいと考えています。

スペースを有効利用するため、向かい合う形式のテーブル席を採用する場合においては、お互いの視線が合わないようにすることも意識しています。

一般的な診療科では、目隠しまで設ける必要はないかもしれません。この事例は不妊治療の外来クリニックです。

不妊治療などの、より一層プライバシーに配慮する必要がある診療科の場合は、衝立や植栽で目隠しをしたり、壁や庭に向けたカウンター席を設けることもお勧めしています。

待合にミネラルウォーターサーバーや給茶機を置く医療施設も増えてきました。

『カフェスタイル』の待合では、一歩進んで、豆挽きのコーヒーマシンの導入なども検討してもよいのではないでしょうか。

機械の清掃等メンテナンスの手間がかかりますが、差別化の一環として、集患につながるのであれば検討の余地はあると思います。

当事務所では、従来の固定観念にとらわれることなく、これからの医療施設に求められるものとは何か、を模索し、提案していきたいと考えております

清潔、誠実などの根本的なところで医療施設に必要な要素を逸脱することなく、真摯な姿勢を基本としつつ、遊び心も取り入れた柔軟な医療施設の設計を推し進めていきたいと思っております。